トラビスならどうしてたか? 

 2016年1月に発売されたドイツのスノーボード専門誌「Pleasure Snowboard Magazine」の表紙。そこにはDrink Waterの中心人物、ブライアン・フォックスのウェアが写っていた。右腕にはマーカーペンで “What would Travis do?(トラビスならどうしてたか?)”、そして左腕には “What would Craig do?(クレイグならどうしてたか?)” と書かれている。クレイグとは言わずもがなクレイグ・ケリーのこと。では、トラビスとは誰のことを指すのか? そのことをブライアンに聞くと、それはトラビス・ライスだと教えてくれた。トラビス・ライスは圧倒的なスキルとバイタリティで、スノーボードの限界を押し上げているライダーのひとりだ。
 しかし他にもトラビスの名を持った、忘れてはならないスノーボーダーがいる。それがトラビス・パーカーだ。このコラムを読んでいる人の中にはトラビス・パーカーなんて知らないという人も多いかもしれない。彼は2000年代にTBシリーズやRobot Foodなどのビデオで活躍し、2009年にはプロライダーを引退しているのだから(2011年に古巣のK2でこっそり復活したこともあったが……)。独創的なウェアブランドのAirblasterの起ち上げメンバーのひとりである彼の人生もかなり個性的だ。プロライダー引退後すぐに寿司職人になったと話題になったこともある。ただ、そんなトラビス・パーカーだが、現役時代はかなり多くのスノーボーダーを魅了した。それは彼のスノーボードに対する姿勢が大きく影響していると言ってもいいだろう。クールでスタイリッシュなライダーたちに人気が集まるなか、トラビスの滑りは実に風変わりなものだった。誰も思いつかないようなライディングスタイルは唯一無二。そしてシリアスでハードコアなライディングが求められていた時代にあって、いつだってトラビス・パーカーの滑りはスノーボードの楽しさを追求し、それを全身で表現していた。当時のスノーボードビデオの撮影と言えば、次々とニュートリックの開発が求められ、アイテムとジャンプやジブのスケールは大きくなるばかり。ライダーがフルパートを残すためには、たとえリスクが高くても身体を張って映像を残さなくてはならなかったのだ。しかし、トラビス・パーカーの滑りは見る者を釘付けにする意外性とエンターテイメント性に溢れていた。今で言えばスコット・スティーブンスやディラン・ガマチェのようなテクニカルな滑りにも通じる。もちろん、そのような滑りで魅せるためには高いスキルが必要であることは言うまでもない。また、滑りだけではなく、生き方そのものも予想を超えていたのがトラビス・パーカーの凄いところだ。
 今、改めて彼の滑りの映像を見ても、やっぱり新鮮でまったく色褪せてはいない。きっとそれはこれから先も変わらないだろう。記録ではなく、記憶に残るスノーボーダー。それがトラビス・パーカーなのだ。

-AY

 

 


Robot Foodの2002年作品『Afterbang』。トラビス・パーカーのパートは8:20あたりから。ワンフットでフロントサイド180をしながらクリフをドロップする映像には強烈な衝撃を受けた。
 


Robot Foodの2003年作品『Lame』。26:25からがトラビス・パーカーのパート。選曲がティアーズ・フォー・フィアーズを使っちゃうところが普通じゃない。
 


トラビス・パーカーが出演したRobot Foodの最後の作品『Afterlame』。ライダーパートという構成をぶち壊した革新的な作品で、オープニングパートも斬新だった。
 


自分たちで乗り物を作って、ペダルを漕いで自力で滑りに行くというアドベンチャースノーボードムービー『Bikecar』。トラビス・パーカー以外にスコッティ・ウィットレイクなども出演している。

2
SHRED
ELECTRIC

Click to Share