人生いろいろ

 少し前になるけど、あるタレントが出家して芸能界を引退すると発表して大騒ぎしていた。なぜその決断に至ったのかは本人にしか分からないし、理由を他人が詮索しても正解など出ないわけで。人にはいろいろな事情やタイミング、そして他人には理解できないような理由や思いつきで周りを驚かせるような舵取りをすることがある。もちろんブライアン・イグチのように10代で活躍し、40代になったいまでも現役で活躍している人もいる。同じように過去にプロスノーボーダーとして活動した人がメーカーに入ったり、ブランドを立ち上げたりしてスノーボード業界に携わっている人もたくさんいる。今回、光を当てるのはそういう舵取りではなく、スノーボード業界ともまったく違う形で第二の人生を送っているひとりの男の話だ。
 アメリカ・モンタナ出身のプロスノーボーダー、アンドリュー・クロフォードはKingpin ProductionやStandard Filmsでビデオパートを撮り、ふたつのビデオゲームにも2キャラクターとして使われるほど人気を誇っていた。Morrowのライダーとして長年活躍し、その後Nitroに移籍。プロになって10年が過ぎた頃、35ヵ所もの骨折やストレスなどから気持ちは別の方向へ向かっていった。オフシーズンには実家のあるモンタナへ戻り、31歳にして大学に入学し自宅でボートを作りながらロケットエンジニアとしての勉強を始めた。しかし本当にロケットエンジニアになれるのか不安が無かったわけもない。うまく卒業できたとしても36歳。その先に明るい未来が約束されてる保証もない。それでも夢を諦めず寝る間も惜しんで勉強に励んだ。しかし、あまりのキツさに何度か辞めようと思ったことがあったという。そのときにNASAのMars Rover(火星着陸後に火星表面を自動で走行するローバー)のデザインコンテストが学生向けにおこなわれることを知った。コンピューターのことは少しは知ってるほうだったが、コンピューターデザインの知識は無かった。そこで夏のすべてをかけてコンピューターデザインの勉強から始めて、なんとコンテストで優勝。プロスノーボーダーとして活躍した男がヒューストンにあるNASAのジョンソンスペースセンターでミッションコントロールに在籍することなった。アンドリューが本当に凄いのは実はここから。足りない知識を補うためにNASAからMSU(モンタナ州立大学)へ移り、エンジニアの学位を取得。そしてその後、Googleの機密施設で次世代技術の開発をおこなうXと呼ばれるプロジェクトに引き抜かれた。そのなかで現在アンドリューは自動運転技術の開発に携わっている。人生は何があるか分からないものけど、彼の場合はモノ作りへの熱意と情熱で自らの未来を切り開いて行った結果だ。何かをやるのに遅すぎることは無いと教えられたような気がする。

-A.Y

 


プロスノーボーダーからロケットエンジニア、そしてGoogleまでの歴史を自らの言葉で話すTEDの模様。

 


Standard Filmsで活躍した時代の映像。アンドリューの滑りはまさにロックそのものだった。

 


2006年の作品、ir77にも参加した。120ページの本とDVDがセットになった作品でルーカス・ハフマンが中心となって制作。

 


2006年のir77のリリースから10年後にライダーたちのコメントを収録した作品。アンドリューのコメント以外にも懐かしい面々が並ぶ。

 

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