ティーンたちが命懸けで挑む頂点

 今月8日、ニュージーランドで行われたワールドカップのハーフパイプ競技で戸塚優斗が15歳で初優勝した。そして2位には平野歩夢が入った。どうやら日本はいつからかハーフパイプ大国と言われているらしい。アメリカのように美しく整備されたハーフパイプが皆無で、練習する場所が整っていないことは、表彰台を目指す日本人ライダーたちにとって本当に厳しい環境だろう。国内のハーフパイプがどんどん無くなっていくのとは反対に、日本人ハーフパイプライダーの活躍は素晴らしい。こうなってくると次の平昌オリンピックでのメダル獲得、そして待望の金メダルを期待する声が高まっていくのは間違いない。テレビやネットでもメダル圏内のライダーたちへの取材がこれから激しくなっていく。そんな状況をみて、ひとりのスノーボーダーの存在が頭をよぎった。
 2009年、バンクーバー五輪のアメリカ代表として最有力候補としてみられていたケビン・ピアース。ニッポンオープンのスロープスタイルで優勝したり、トヨタビッグエアにも何度も出場し優勝経験もあり、日本人にも人気のスノーボーダーだった。五輪前、最強だったショーン・ホワイトにユーロオープンで勝利していたケビンこそ、絶対王者ショーンの牙城を崩すライバルとして注目されていた。まさにオリンピック出場に向けて当時新しいトリックだったダブルコークの練習中に、人生を左右する大怪我を負った。脳への重度の障害の影響で30日以上も意識を失い、意識を取り戻した後もしばらく歩くことも話すことも出来なかった。ヘルメットをかぶっていなければ死んでいてもおかしくない大事故だった。過酷なリハビリを経て、ケビンは再びスノーボードが出来るまでに回復。現在はさまざまな場所で講演をしたり、LoveYourBrainという団体を作り、脳障害で苦しむ家族をサポートする活動をしている。スノーボードの練習中の怪我で夢を奪われてもなお、ケビンはスノーボードから離れることなく、さらに激化するハーフパイプシーンに関しても悲観的な考えは持っていない。
 現在のハーフパイプシーンはトリックの進化が止まらない。ハーフパイプのサイズは大きく変わっていない中で、エアーの高さ、回転数、そして完成度は日に日にアップしている。その中で世界中のトップライダーを打ち負かす日本人ライダーたちの実力は世界が認めている事実。大会で勝つこともとても重要だとは思うけど、それ以上に大事なことがあることも応援する側も忘れないでいて欲しい。ケビンには3人の兄弟がいるが、そのうちのひとり、弟のデイビッドはダウン症を持っている。デイビッドはケビンが選手として大会に復帰することを頑なに反対している。なぜなら「ケビンを失いたくない」から。一歩間違えば、人生を左右するような大怪我をしてしまう。そんな過酷な状況の中で10代の選手たちが戦い続けていることに感服する。

-AY

 


オーストラリアのラジオ局、ACラジオに出演した時のインタビューを交えながら作られた作品。衝撃のクラッシュシーンの映像も収録されている。

 


今年春にプレゼン番組、TEDに出演した時の映像。怪我する前のケビンのように英語の発音も滑らかにもどっている。

 


怪我後、初めてスノーボードした時の模様。終始ニッコニコのケビンの表情が印象的。

 


2013年には怪我が変えたケビンのスノーボードライフのドキュメンタリー作品も作られた。

olympic halfpipe オリンピック ハーフパイプ

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