想像してごらん。自分が自由に思い描いたラインを滑っている姿を 

 
 9月下旬。北海道の真夏並みの残暑が残る東京を訪れていた私は、某専門誌のオフィスにてビッグニュースを耳にした。寝耳に水とはこのことだ。来年1月に長野県白馬であのFreeride World Tour(以下FWT)の予選大会が開催されるというのだ! FWTはヨーロッパやアメリカではメジャーな大会だけど、日本ではほぼ知られていない。簡単に言うとスキーとスノーボードのビッグマウンテンで行われるエクストリームの大会。その舞台がハンパない。フランスはシャモニー、スイスはベルビエ、アラスカはヘインズと、ビッグマウンテンを目指す者ならば誰もが憧れるTHE ビッグなマウンテンで大会がおこなわれるのだ。しかもFWTに参加できる選手はごくわずかで、まずはヨーロッパ、アメリカ各地で行われる予選の大会に出場して、成績を残しポイントを獲得していかなければならない。そして予選の年間ランキング1位となって初めてFWTの舞台に立てるという、まるで板一本分のシュート並みの狭き門なのだ。私は数年前に初めてこのツアーの存在を知り、挑戦したい! といろいろ調べてはみたけど、各国の予選大会を転戦するだけで白目をむくようなお金がかかり、しかも最速でも2年は掛かるという理由で諦めていた。そのFWTの予選がアジアで初めて白馬でおこなわれるというのだから、興奮しないわけがない。この予選大会に出場するには本来ポイントが必要なのだが、今回は日本人枠が設けられるというからソワソワしっぱなしなのである。
 フリーライドの大会では何を競うのか? というと、スタートからゴールの上から下までの間のラインを採点されポイントを競うのだ。決められたスタート地点とゴール地点があるだけなので、高得点を得るためには、独創的で難しいラインを選び、エアやクリフジャンプを組み込むこと。スムーズでスピーディなボードコントロールが要求される。“一番やばい滑りをしたやつが勝ち” というやつである。


2013年のThe North Faceのムービー、『This is My Winter』の中でほぼ垂直の氷壁を滑り降りたラインでビッグマウンテンライダーの最高峰のスキルを見せつけたザビエル・デ・ラ・ルーもFWTに参戦していた。これは2010年スイスベルビエでのザビエルのウィニングランの動画。エッジ一本に命が委ねられているような斜度に決して良くない雪質。全く先が見えない中での見事なライン取り。え? そこ飛ぶの? っていうデカいクリフジャンプに超ピンポイントなランディングから、一気にハイスピードでロック地帯をすり抜けるボードコントロール…。ただただアメージング。ドキドキ心臓が揺さぶられるラインだ。

 私にとって初めてのフリーライドの大会は、2012年アラスカで行われたWolrd Freeride Championships(前身はKing of the Hill)であった。初海外で初めてのフリーライドの大会。そこでなんと私は2位になったのだ。先が見えないほどの急斜面に、すぐ後ろから迫ってくるスラフ、ゴツゴツした岩場をすり抜けるとか、とにかく明らさまに死と隣り合わせの斜面を滑るのは初めての体験だった。
 ちなみに私の名前は陽子なのだが、外国人に覚えてもらうため、いつもこんなことを付け加えている。「ジョン・レノンのワイフ、ヨーコ・オノを知ってる? 同じ名前だよ」ってね。
 それでは「Imagine 想像してごらん / 生まれて初めてのヘリコプターに乗り込みコンテストが行われる斜面のボトムに到着 / ヘリの興奮冷めやらぬまま、はじめてお目にかかる斜4面の無数のラインに目移りしながら、10分後ヘリで何も決まってない状態でトップにいる自分を / 斜面を撮影した写真をチェックしながら、他の人とは被らないラインを絞りデッドゾーンを把握 / 写真上にイメージしたラインを上から見た図に置き換える作業をして、スラフの流れを読み、ひたすらトップtoボトムをイメージしラインを結ぶ」。

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 私のラインを選ぶコツは、ドキドキワクワクするようなラインながらも冷静にイケるかイケないかで選んでいる。簡単すぎるラインは面白くないし、まして無茶なラインは死ぬかもしれない。そしてこれはコンテストだということを忘れずに。さぁ、あなたはどのラインを選びますか? この斜面を使った決勝のランをどうぞ。


Flow World Freeride Championships 2012 Finals

 アラスカの斜面も日本のバックカントリーもライディングに関して言えば特別な違いは何もない。日々のフリーライディングの延長であり、あとはその場所に合った動きを引き出して環境に合わせて調整していくだけ。例えば、ゴツゴツのロックラインだとしても、それはツリーランを滑り抜けると思えば同じこと。エッジが抜けたら下まで止まることのない南斜面のアイスバーンや、想像以上のスラフの速さにもすぐに適応すればいい。
 アイテムひとつでもどう使うかはライダーの想像力次第でアプローチが全然違う。想像力が豊かであればあるほど、何通りもの遊び方ができる。つまり想像力がモノを言う。どんなことでもイメージできないことは、人間できるわけがないのだから。フリーライディングにおいて必要な能力は、(もちろん滑走技術がありバックカントリーでは必要最低限の知識があるという前提でのお話だが)想像力と応用・適応能力なんだと、私は思う。フリーライディングがもっとうまくなりたいと思っている人は、まずはいつものスキー場で新たに遊べる場所や遊び方を探してみよう。視野を広く持ち、想像力を膨らませて。楽しみ方は自分次第で未知数なのがフリーライディングなのだ! さぁ、想像してごらん? 自分が自由に思い描いたラインを滑っている姿を。今年の冬が楽しみでしょ?

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column_yokonakamura中村陽子 / YOKO NAKAMURA Facebook Instagram中村陽子
YOKO NAKAMURA

北海道岩内郡出身の生粋の道産子。2013年にアラスカでおこなわれたフリーライドの世界大会Flow Wold Freeride Championshipsで優勝。さらに2015年のアメリカで開催されたDirksen Dirbyで2位に入るなど世界を舞台に活躍する日本を代表するフリーライディングライダー。

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