ヘルメットという選択肢

 「◯◯のパート観た? ヤバくない?」
 「ヤバかったね~! でもさ、滑りはかっこいいけど、あいつヘルメットしてるしな…」
 なんて会話を聞いたことはないだろうか。そう、ヘルメットをして滑っているだけで、ある意味、ルックス面で減点対象になってしまう。たしかに、見た目はかっこよくはない。ヘルメットのルックスが好き過ぎて、ファッションの一部としてデートには必ずヘルメットを装着して出かける、なんて人もいないだろう。

 でも、実際に考えてみるとどうなのか。人間にとって致命傷を負いやすい頭をさらけ出してスノーボードをするのは非常に危険なこと。氷のように固いランディングに向かってジャンプ、鉄柱のように固い冬山の木をすり抜けていくツリーラン。スノーボードを始めて数年もすれば多くの危険な状況が増えてくる。(だからってやめないんだけどね)滑り続けていくうえで、ヘルメットが本当に必要なときが来るんじゃないだろうか。

 アメリカのスノーボードブランド、Libtechのトップライダーのひとり、ジェイソン・ロビンソンはあることをキッカケにヘルメットをかぶるようになったひとり。ジェイソンがその決断をしたのは、彼の弟、A-Robことアーロン・ロビンソンが亡くなってから。A-Robはチリのバックカントリーで岩に頭を強打したのが致命傷となった。子供の頃からの滑り仲間であり、後にふたりともにプロスノーボーダーとなり活動を共にしてきた兄弟の死から受けるショックは計り知れない。その後、ヘルメットをしてプロ活動を続けるという約束を母親とかわしたそうだ。

 また、同じくLibtechにジェシー・バートナーという男がいる。現在はLibtech含むMervin社のマーケティング担当であり、チームライダーとしても活動継続中。彼はオレと初めて合う前からずっとヘルメットをして滑っている。なぜか? ストリートで頭を打ったからだ。それもひどいやつ。むき出しのコンクリートのステアに後頭部を打ったのだという。まさに生きるか死ぬかの状況までいって、もうスノーボードはできなくなる。と落ち込んでいたジェシーに医者が言った言葉は、「ヘルメットすればスノーボードして大丈夫だよ」。そりゃヘルメットするしかないでしょ。
 駆け出しの頃はビッグエアー(Vans Triple Crownなど)の大会を転戦したり、いわゆる「Go Big」スタイルだったジェシー。事故後のスノーボードとの向き合い方は「Mini Shred」と呼ぶ、小さなアイテムでも楽しめる手法に変わっていった。ワンフットでファストプラント、フリップやショービットなど、いままでスノーボーディングで見る機会の少なかった奇想天外なトリックのフッテージを残してきた。その後、彼が主宰するビデオプロダクション、Think Thankは「Mini Shred」で生まれたクリエイティブ思考を落とし込んだ表現手法でムービーを作り続け、世界的に知られるプロダクションとなっていった。

 このように、当たり前だがヘルメットをしている滑り手にもさまざまな事情がある。特に前述したふたりに関しては、誰もがうなずける確固たる理由を持ち合わせている。子供が安全にスポーツを楽しむために間違いなく必要なギアのひとつでもある。一概にヘルメットがダサいと差別するべきではない。
 オレも正直に言えば、ルックスだけで考えると進んでヘルメットはかぶれない。ただ、いつかかぶるときが来たらそれでいいと思っている。それが、滑り続けるための決断だとすれば。かぶってみたら意外と気に入っちゃったりして。でもホントの話、それで自分が良くて、なおかつ周りを納得させる活動をしているんなら、ヘイターの言うことなんて関係ないっしょ。結局は自分の心で判断するしかない。ということ。

 


Absinthe Films 『Dopamine』に収録のジェイソン・ロビンソンパート。エグい地形をものすごいスピードで滑り抜けているのは圧巻の一言。

 


'97年から毎年フルパートを残し続けたジェシー・バートナーの活動20年アニバーサリーエディット。この偉業の達成にはリスペクトしかありません。転倒事故時のフッテージも収録。

 

BROCKEN-GBROCKEN-GBROCKEN-G

日本出身の旅人。長年の放浪の末、2016年帰国。元プロスノーボーダー、普通のスノーボーダー、季節労働者、Sushi職人、あのよく酒を奢ってくれる人、あのよく酒をせびってくる人、BBQ番長などなど…人が彼を形容する言葉は多くあるがVHSSNOW上での肩書きはコラムニスト。

ヘルメット helmet

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